レイプ被害を訴えた10代の少女が発言を撤回。事件は本当にでっち上げだったのか? 2人の女刑事が、残された証拠から真実を追う。実際の事件に着想を得たドラマ。(Filmarksより引用)
Netlfixドラマシリーズの掘り出し物
Netflixで何か見るものないかなーとアルゴリズムがお勧めするままにザッピングしていて、予告編の仕上がりが好みだったこととトニー・コレットが出演しているので結構いいドラマかも、ぐらいのテンションで見始めました。
が・・・、これがとんでもない良質作品でした。調べてみるとゴールデングローブ賞やエミー賞などにもノミネートされ、2019年のベストドラマと言われたとか!!(思えば、2019年は仕事が激務過ぎて、あんまり映画やドラマを見れていない時期でした)
実話に基づいた題材が辛すぎるので、傑作と言うことに抵抗ありますが、プロダクションや制作レベルも高く、とにかく素晴らしいキャスト陣が揃っていると思います。強いて言うなら、2話減らして全6エピソードがちょうど良かったんじゃないかなーってくらいです。8話にするために、後半は無駄な喧嘩や間延びしているシーンが増えてしまった印象がありました。
本作は、2015年──「#MeToo」や「Time’s Up」がムーブメントになる2年前──に発表され、翌年に『ピュリツァー賞』を受賞した記事「An Unbelievable Story of Rape」に基づいているが、もともとそれ自体が、ジャーナリストのケン・アームストロングとT・クリスチャン・ミラーが別個に調査していた事件が、実は同一の事件であったと判明したことから成り立っている。『エリン・ブロコビッチ』(2000)や『アニタ 世紀のセクハラ事件』(2016)の脚本で知られる製作総責任者スザンナ・グラントをはじめとした製作陣は、ドラマ化するにあたって、描写を誇張せずに当事者の経験に忠実な物語を語ると同時に、名前を変えるなど彼女たちへの配慮にも注意を払って作りあげた(本作には実際のマリー本人も製作総指揮として関わっているが、彼女は自身のミドルネームである「マリー」とだけクレジットされている)。ー引用元サイト:CINRA .NET「Netflix『アンビリーバブル』。少女は2度被害に遭い、声は潰された」
主役マリーを演じた若手の星ケイトリン・デヴァー、対峙する警察のリアリティ
まず、第1話は苦しいです。事件が起きた後の事情聴取から始まりますが、本人が供述する内容に合わせて事件がフラッシュバックするのでメンタルがやられます。そこに畳み掛けるように、形式的な理由で何度も何度も説明をさせられる状況が続くので、視聴者が主役マリーの気持ちに共感できるよう自然と誘導されます。
事件の被害者である主役マリーを演じた、ケイトリン・デヴァーが素晴らしい演技力を見せます。彼女と対峙する警察官とのやり取りにおいて、脚本や演出のリアリティは過去一でした。
よく映画に出てくる、わかりやすく威圧的で怒鳴り出す警察ではなく、マリーの話の辻褄が合わないことから「嘘なんじゃないの?」って追い詰め出す展開はリアル過ぎて苦しいです。警察側も毎日色んな人を事情聴取する中で、罪人と話す確率の方が高いでしょうから、苛立ち始める大人の事情も分かります。分かりやすい「悪役」感なく、どんどん悪役となっていく描き方はとても現実性があり、警察役のエリック・ラングもハマり役だったと思います。
(と言いますか、この警察役の上司役が一番悪だったような気がしますね。最後、上司だけは謝罪しないので、中間管理職の葛藤含めて、現実の含みが持たされていたように思います。)
結果、主役マリーが警察に何度も同じ話しているうちに話の辻褄が合わないところが出てきて突っ込まれるのですが、なんで辻褄合わない話をするんだろう?と疑問は残ります。事件自体をなかったことにしたくて記憶が曖昧になる現象なのか、本当に聞かれすぎて疲れて付け足しちゃったのか、何度も話しているうちに脚色し始めたのか、そこは明確にはなりません。
ただ私も性格的に、とにかく「終わらせる」ために代償を払ってしまう方なので、あそこまで問い詰められたら何をどう話したか分からなくなり、何が現実なのかも迷宮入りして、「もういいです、何もありませんでした、帰らせてください」って言ってしまうだろうなあと思ってしまいましたね。だからこそ辛かった・・・映画やドラマの人にはそこを払拭して戦う爽快感を持ってほしいと願ってしまう方なんです。でも、これは実話ですから!辛い。
その後、主役マリーは昔付き合っていた人を拠り所にするも、不自然な喧嘩をしたり(この描写はありきたりすぎて若干余計)、衝突を繰り返して周りの人の不信感が募ってしまうのですが、結局マリーに真実や自分の気持ちを話せる相手がいないことが浮き彫りになります。
もっと言えば、話せる人はいると思いますが、マリー自身が里親を転々としてきた幼少期を過ごしているので、愛情関係や信頼関係を築く経験値が少なすぎて、助けを求める術を知らない印象です。どんな些細なことでも、話せる相手がいることで救いが生まれる大切さを知らせてくれます。
刑事タット役のメリット・ウェヴァーの名演
このドラマに引き込まれた最大の理由は、刑事タット役のメリット・ウェヴァーでした。こんな素晴らしい女優を今まで見ていなかったなんて!と思ったのですが、彼女の過去作品はコテコテの西部劇とナースジャッキーのドラマシリーズ。若干偏りあるセレクションw、見ていないわけです。
メリットの演技力は計り知れないです。今回の刑事役を象徴する髪型や衣装も相まって、演技力だけでなく雰囲気も含めてハマり役でした。何より、声と発声の仕方が独特で忘れられないです。この刑事役にぴったりな冷静さと慈悲深い包容力があります。
インタビューを見ていると、メリットは自分に厳しく、キャラクター作りに拘り抜いている様子が伺えます。周りが満足していようが、「よかったよ!」と彼女を励まそうが関係ない、自分が納得していないところは決して許せない。そんな彼女のプロフェッショナリズムを貫くスタイルが、このタット役に反映されていたように思います。
余談ですが、メリットが演じたタットの旦那役がとても素敵な描かれ方しています。そこまで出番はないのですが、同職同士として彼女を支えている様子がよく分かるので、どんな怖い場面でも「あの旦那がいる」っていう安心感がありました。この描かれ方は女性の脚本家だなあ、と。なんていうか、どこか女性が思う理想的な男性です。
もしかしたら、メリット・ウェヴァーはこれまで見てきた「女優」の中で一番好きかもしれないとすら思うので、今後、彼女の作品は絶対見ていこうと思います!
里親役のブリジット・エヴァレットが絶妙
アメリカでは、各州の法律に基づいた里親制度があります。実の親が子どもの世話をできない場合に、訓練を受けた養育者が、一時的に子どもの養育を行うため引き取ります。
私自身が大学時代のインターンで、こういった家族を対応したり観察するソーシャルワーカーとして数ヶ月対応した経験があるので、里親制度で育つ子どもたちの映画を見ると胸が痛くなります。
事故や急死で両親を亡くす子供もいますが、親が何らかしらの問題を抱えているために離されることが大半です。どれだけアル中で、どれだけ生活できないほどお金のない母親でも、親が子を思う気持ちや子供が母親を求める気持ちは代え難いものなのです。周りが理解できなくても、親子間には紛れもない絆があります。お母さんと離れるのが嫌で、泣きすぎて痙攣する子供を何度も里親宅へ送り届けました。
そういったことを思い返すと、このお話に出てくる里親たちの苦労、そして主役マリーが何家族も点々としてきた心の傷を描写するのはなかなか難しいです。綺麗事にならな過ぎるからです。
そんなことを思いながら見ていましたが、里親役のコリーンを演じていたブリジット・エヴァレットはとても良い存在感で目を惹きました。マリーが事件当時の里親ではなく、コリーンに助けを求めるのも、コリーンの方が安心感を感じられる納得できる描写になっています。コリーン夫婦の雰囲気や家の佇まいなどは、里親制度でよく見かけたなあ、と。
こんな女優さんいたかなあ?と思って調べてみたら、コメディアン!!どうやら、私は本気でシリアスドラマに出演するコメディアンが大好きなようです。
コメディアンが持つ、特有の雰囲気と間合いがやはり好みです。真剣なシーンでも少し緩さが出るので、それが包容力となり、コミカルなシーンはとてもテンポがいい。何より言葉を大事にしているので、相手としっかり呼応します。そういった意味で、コメディアンの演技は大好きです。
彼女も好調なHBOシリーズがあるので、少しフォローしていこうと思います!
良作のフックになるトニー・コレット
今回のシリーズを見たきっかけは、トニー・コレットが出演していたからこそでしたが、結果的にトニー以外の役者に目がいってしまいました。トニーの顔つきは独特で険しいので、今回のような刑事役となると、そのまますぎると言いますかw。役柄の奥行きが出ないなあと実感しました。
ただ、彼女の強いプレゼンスがあるからこそ、他の役者が引き出され、今回の相棒役メリット・ウェヴァーの良さが光りました。トニーとメリットのコンビ陰影が綺麗だったので、これからもこのコンビで見たいぐらいです。
彼女は王道にシックス・センスのお母さん役で有名だと思いますが、どこか苦労人でひたむきに戦う役は似合いますよね。でも、刑事役ってなると、あまりにもそのまま過ぎて周りを引き出す脇役になっちゃうって印象です。これはトニーの技術が高すぎるっていうことの反動だと思います。ああ、難しい。
キャストのその他作品に大注目
この作品を機に、キャストの他作品を色々と調べて、次に興味が出たのはケイトリン・デヴァーが出演する「Dopestick」です。この出会いを大切に、この作品も見ていこうと思います!
マイケル・キートンが主演・製作総指揮を務める本作は、1990年代から2000年代にかけて実際に起こった実話を元にし、ニューヨーク・タイムズのベストセラーにもなったベス・メイシー著の「DOPESICK~アメリカを蝕むオピオイド危機~」が原作の社会派ドラマ。ある企業が開発したオピオイド系鎮痛剤“オキシコンチン”が誤ったマーケティング・キャンペーンにより蔓延し依存症患者が激増したアメリカ歴史上最悪の状況を、大手製薬会社、バージニア州の鉱業所、DEA(Drug Enforcement Administration:麻薬取締局)の内部などさまざまな視点で実態を描いている。引用元:SCREEN ONLINE