IPPONグランプリの感想と楽しみ方:第28回大会バカリズムのトランスフォーメーションと千原ジュニアの不在

めちゃくちゃ久しぶりのお笑いブログです。お笑いが大好きで、当時東京進出したかまいたちを応援する一心で始めたこのブログでしたが、そんな応援なんてもう要らないほどご活躍なので、しばらく眠らせてました。

そんな私は、昨年2022年春よりアメリカ赴任となり、お笑いから少し離れるのかと思いきや、このご時世のVPNと配信プラットフォームのおかげで遅れを取らず、寧ろ観るもの多過ぎてデトックスしてるぐらいです。なんて時代だ。

さて、今回のIPPONグランプリを見て、友人と話していて盛り上がり、背中を押してくれたので、久しぶりに想いを書いてみることにしました。

その友人に「今回のIPPONはそんなに面白くなかった。強い人と弱い人の乖離が大き過ぎた。これから観るか分からない。」と言われたことは着火剤ですね。え!視聴者失いかけてるの!?っていう勝手な危機感。ちなみに私は「当たり回!」ってTwitterに投稿したぐらいの真逆っぷりでしたw。

なお、これは完全に私の勝手な戯言です。一、視聴者のただの感想です。事実は存じ上げず、どなたもお会いしていないので「そんなことないわ!」といった内容だと思いますが、こういった感想を自由に言いながら、スポーツや映画や芸術のように昇華されるエンタメになって欲しいだけの思いです。

私の見方:大喜利は内容よりも我流スタイルのキャラクター対決

お笑いの中でも、大喜利は好きなカテゴリーです。言葉遊びでもあって、発想力の面白さがあるうえに、如何に我流スタイルを確立しているかのキャラクター勝負であるところが大好きです。

同じ答えでも、人が変われば面白さも反応も全然違う。そんな、生身の体当たり人間勝負だからこそ、面白くて目が離せません。

このキャラクター勝負というのは、①自分②観客(対外的)③業界(対内的、IPPONであればチェアマン松本人志、芸人審査員含む)それぞれのイメージが合致しているかどうかで決まるように見えます。

「ロバート秋山さんはこういう人だ、こういうスタイルだ!」っていうイメージが①自分②観客③業界の全体通してバチっと合って貫かれていると「強い」、どれか合わないと不発になりがちになる気がしてます。だって、プロ全員があの場に呼ばれているのですから、基本的に回答に失敗はあってもハズレはないです。

この我流スタイルやキャラクターを若手で発揮するのは非常に難しい。サラリーマンあるあるで、新卒時代から立場を確立できるわけがないのと同じです。(できてるなら、会社員になる必要なんてない、起業家スターだ!今すぐビジョンを明確にして会社を興そう!)

私サラリーマンの個人的な経験談で語りますと、我流スタイルやキャラクターは、色んな経験や出会いを経て、沢山の人に支えてもらいながら自分の強みやポジショニングを知り、真摯に自分と向き合いながら試行錯誤の年月を重ね、その先にある実績を得てその分の年齢の重みを増して、確立するものと感じてます。

お笑いも、おじさんが面白いのは、長い年月かけて磨いた技術はもちろん、シンプルに人生の経験を重ねた結果だと思ってます。(おじさん芸人大好きだ、頑張って!)

そんなイメージを持っているので、例えば今回のIPPONグランプリ観ているときも、「ああ、空気階段かたまり君は駆け出しの初戦だし、まだ①自分②観客③業界のどれも合っていないんだな、バカリズム・ロバート秋山さん・ホリケンは①②③は確立していて表現出来ているんだな、野田クリスタルは①を②③の期待に合わせるのに苦労しているのかも、う大先生ったら①のみで勝負してるわ」とか、そんな見方をしながら楽しんでいます。

壮大なことを言えば、全芸人が①自分②観客③業界の期待値やイメージを合致させて、唯一無二の芸人=アーティストになってほしい!!って想いで応援しています。

一朝一夕で急に出来上がるわけではない、我流スタイルとキャラクターを構築する人生ストーリーを歩んでいる中、それぞれの良さや強みがあり、それぞれの葛藤や面白さがあるので、「つまらない」「面白くない」「弱い」で片付けられない!!って思ってます。

でも、テレビ番組のバラエティでそこまで伝わるはずもなく・・・どんなビジネスや娯楽、スポーツにも言えることですよね。

その場の結果が全て。

強過ぎるバカリズムのトランスフォーメーション

バカリズムは2009年の第1回からずっと出ている大喜利お化けですが、ここにきて過去一の強さを発揮していて驚愕でした。香典PayPay、なんてキャッチーなんでしょう。そして、なんて①自分②観客③業界のイメージが全て合致しているんだと感動でした。

バカリズムが天才なのは周知の事実だとしても、ここ数年、彼がずーーっとディフェンシングチャンピオンのポジションを取らされているところや、ヒール役を任されていることは、苦しい思いで見てました。有吉に一度言われた、「負けて笑える芸人になってね?」は、視聴者側も図星で何とも言えない気持ちで見ていました。

私のイメージでは、バカリズムは名職人なのに、そんなバトルモード求められてもって想い。ただただ高品質な回答をお届けしてるだけ。ずっとロクロに向かって綺麗な陶芸品を作っている人に、ある日急に競りに出ろと言われても困っちゃいますよね。

でも、バラエティのポジションとしてその役を担い、プライドと葛藤を気負いながら数年戦っていた中、このIPPONが偶然にも1年ぶり。この1年っていうのは大きいです。

この1年の間にあったことと言えば、バカリズム脚本の「ブラッシュアップライフ」が大成功したこと。アメリカにいても、SNS通じて日本の盛り上がりは届きまして、お笑いファンではないドラマ好きの友人から如何にハマっていて面白いかの連絡が来たりして、ああ、このドラマはヒットしてるんだな、と感じてました。

そんなブラッシュアップライフ終わってからの、ホットなタイミングでのIPPON。なんとなく、バカリズム自身の立ち位置がより確立して、ヒール役をそれほど気負わなくなり、自由に伸び伸び大喜利していたら、バカリズムのお笑いは知らなくともブラッシュアップライフを知っている観客層が加わって安定して、脚本家の実績を積み上げながら腕前を落とさない信頼を業界と築き、大喜利お化けが大喜利の神様に昇華っていたっていう、トランスフォーメーションに見えました

恐るべし、バカリズム。自分のスキルをきちんと磨いて、ポジショニングをしっかり取れば、ずっと成長できると思わせてくれる芸人さんです。

しかし、強かった・・・強過ぎた・・・怖かった。

4年ぶりの不在、千原ジュニアの存在

そんな強いバカリズムの横での戦いを強いられたわけですが、いつもよりムラが見えた理由の一つは、千原ジュニアがいなかったことかと思ってます。

私は千原ジュニアが大好きなのですが、ジュニアファンからすると中途半端で、そんな曖昧に好きと言うと怒られそうなのでw、前置きしますと○○な話→ざっくりハイタッチ→にけつッ→座王→YouTubeチャンネル系譜で好きです。ジャックナイフ時代を知らず、千原兄弟のネタも殆ど知らないです。それでも、数少ない女性支持者であると名乗らせてください(分かってる、ファンとまでは言えない!)。

IPPONにおいての千原ジュニアは、芸人界を背負うリーダーとしてピカイチで大好きです。回答も好みです。

私のイメージですが、ジュニアはとにかく平均点が高い。100点満点だとしたら90点近い高品質を継続的に出すのですが、200点ドッカーン!って跳ねることは少ない。でも、常に高品質を維持できる能力とスタミナのある稀有な人だと思っています。

そんな彼の①自分②観客③業界で一致しているイメージの一つは、「千原ジュニアは大喜利がとにかく好き」です。少し難儀な回答を出しても、「好きだねー!」っていう加点でIPPONになっていたり、私では到底理解できない技術レベルで点がパンっと入ります。

ジュニアに順番が回れば、品質が維持されます。下がっていれば上げることが出来て、飛び道具的なホリケンや秋山さんの後に回答を出すと隙を作れたりして、全体品質が担保されます。自然とその波に周りの若手が乗り、同類の回答が出た際に審査員も点を入れてあげやすい、そんな底上げ効果を生み出しているのがジュニアだと思ってます。彼はとびっきりの品質管理現場マネージャー

且つ、彼は、とにかく芸人さん達に緊張感を持たせます。「先輩ジュニアさんがいる」っていう緊張感。「ジュニアさんに面白いって思われたい」っていう欲求。「ジュニアさんに認められれば、仕事が増えるかもしれない、道が開けるかもしれない」っていう希望。そんな緊張感を後輩に渡せる、今の芸人界において貴重な次世代リーダー

今回、よくよく調べたらジュニアがいなかったのは2018年以来のこと。コロナも挟んで、芸人界の構図も少しずつ変わっていくなか、久しぶりに現場マネージャーがいない現場は案の定、ピリッとさせる人が1人もいない世界観で緩めでした。少し緊張レベルが低く、質にムラが出がちだったかな、と。でも、逆に強い!弱い!ってわかりやすく、ウネリも出やすくなっていたので、エンタメとしては盛り上がるかも?っていう発見もありました。

いつもIPPON放送後のTwitter見ていると、ジュニアに対する辛辣なコメントが多いんですよね。悔しい。心の中で「現場マネージャー的に文句も引き受けなければならないのか・・・それでも大好きな大喜利を通じて、大会を守り、リーダーとして芸人みんなを引っ張ってるんだからね!」と叫び、応援してました。カンテレの座王がなかったら、今いない若手とか沢山いるはずよ!

その他出演者のカラー、令和のリーダー川島さん

そんな千原ジュニアがいない中で、今回リーダーを担っていたのは麒麟川島さん。今では無双無敵の朝帯ラヴィットから、どんな番組でも頼られる、ジュニアの次の世代のエースであることは間違いないです。

もう「麒麟川島さんが嫌い」なんていう人はいるのだろうか?それぐらいに完璧にやりこなしているところが、令和感のあるリーダーだなあって印象です。なんでもできて、器用で、実力あって、語彙力あって、コミュニケーション能力高くて、信頼されてて、好かれてて、怒らなくて、優しくて。

でも、やっぱりまだ千原ジュニアが醸し出す、緊張感は出ない。良し悪しとかではなく!そんなところが、今回の大会の雰囲気になってたなあって思ってます。

他のメンバーでいうと、粗品。どうしても芸人でありたい粗品、そんな風に見えました。すべらない話の収録日に入籍したり、借金したり、競馬で億賭けたり。今回も0点より7点の方が恥ずかしいと言い放って飛ばしてましたが、ぶっちぎりの実績をぶっちぎりの若さで持つ彼はずっと孤独な戦いを続けてます。正直、彼の才能を誰も手に負えていません。才能あり過ぎて。コンビのYouTubeも人気ですが、個人のYouTubeこそ上手くやってる印象。NHKアニメの作詞作曲までしてますよ。30歳の若気含めて、才能ぶん回して尖っているのはなんて素敵なことでしょう!松ちゃんに「粗品らしいミス=考え過ぎ」とコメントされていて、「らしい」と言われることの貴重さ。チョケたように見えちゃってますが、何回か出てるので、結果の残し方の考え方と行動が不器用なだけかなと思います。

初戦で奔走した空気階段かたまり君。視線が合ってなかったり、タイミングが不思議だったり、同じパターンの回答を出していたりするけども、キングオブコント王者のネタ書きとして実力は十分。あとは、場数を踏んで①自分に自信をつけて、②つけきれない自信を逆にキャラにして観客に後押ししてもらって、③出演者との関係性含めて業界信頼をつけていくのが良さそうですよね。ここから、ここから!

野田クリスタルは本来、評価される側より評価する側に向いている気がするので、この枠組みならばチェアマン松本人志の位置が適材適所ではないかな、と思ってます。マヂカルラブリーのイメージと実際の野田クリスタルの真面目さが乖離していて、観客と業界の期待値が本来の彼に合っていないような。そもそも、M-1王者、R-1王者、ゲームを開発してジムを経営し、R-1審査員やM-1反省会を仕切る、これだけの能力を捌いてる優秀な人材はプレーヤーよりディーラー側にいて欲しい!なのに上が詰まり過ぎてて、上がれないから副業していく会社員を彷彿とさせます。

そして、今回のサプライズカード、う大さん。分かります、う大さんはお笑いファン界では激アツです。昨年のM-1ラストイヤーで、かもめんたるが敗者復活戦までいったことや、演劇界う大ワールドの実績、他芸人とのコラボも増えてきたいま、ホットなのですが、一般的には地上波露出0%に近いう大さん。お笑い大好きな友人にさえ、キングオブコント王者と知られていない、う大さん。う大さんは前提情報がないと、成り立たないなあ、と改めて実感しました。「う大さんだから」「う大さんなのに」の前置きが全てに要りますよね。今回も見てて、う大さんは黙々とこれまでの①自分を出していたが、②認知のない観客を突き放し、③業界の期待値だけが爆上がりしていた、そんな現象に見えたので、う大さんは露出がもっと要りますね!

色んな視点でIPPONグランプリを観てみよう!

約15年続いているIPPONグランプリ。その間に、お笑い界も大企業化して、松ちゃん含めて全員年齢を取っていく中、それでもこの企画が続いていること自体凄いです。それだけよく出来ていて、面白いゲームだからだと思います。

大喜利が面白いだけでは勝てない。キャラクターが確立していて強くても勝てない。早押しの獲得、タイミング、お題の傾向、流れの掴み方、などなど運要素満載なところも痺れます

企画に加えて、全員スーツなのは仕事人感出て、めちゃくちゃかっこいい。お題を読み上げる人の低い声、IPPONの点が入る時の映像、IPPON取れた時の気持ち良い効果音、実況のアナウンサー、試合の解説をする副音声の松っちゃん、本当にレースみたいな作りで、テレビ番組として、とにかく全てが気持ち良い。

ずっと続いてほしい企画だからこそ、色んな楽しみ方や見方を発掘して、視聴者側で共有しながら発展していけると良いですよね。

お笑いも一般化して、賞レース通じて視聴者もレベル上がってきているので、松っちゃんの横に技術周りを説明する人がいると良さそうです。

その役は、神と化した殿堂入りのバカリズムがベストですよね!言わずもがなのチャンピオンであり、松っちゃんとも距離感近過ぎず、ちょうど良いのでぜひ観てみたいです。

色んな意見を交えながら、ワイワイ言いながら、これからもIPPONグランプリを見ることが出来ますように!と願いながら、このブログを綴ります。

ちなみに、IPPONにおいてはロバート秋山さんファンです。面白過ぎて、年々外見が面白くなってきているのもツボです。

おまけ:かまいたち山内さんの初陣

約4年半前、2018年の年末、かまいたち山内さんの初陣メンツはこれ。

このブログを最後まで読んでくれた方なら、このメンツラインナップが如何に凄まじいかは伝わるはず!①自分②観客③業界を網羅した、我流スタイルとキャラクターが確立されている人しかいない。完璧な人たちしかいない。

東京進出早々、まだレギュラーもない頃、1人で挑んでいった山内さん。一、視聴者にも関わらず、心臓バクバクしたのを覚えています。結果は上々、200点みたいな0点を出したこと、松ちゃんや大悟含めて周りのフォローもあって、その次の出演に繋がってたように思います。

ちなみに、この予告のこのカットが大好きで、お気に入りに保存してます。「考え込んで困っている時の表情」を集めたものだと思っていて、全員の個性がよく表れていてアート的なコラージュに見えます。

これを作った人といつか会ってみたいです。